研究・技術開発紹介

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2018年12月27日

桟橋上部プレキャスト工法の開発

概要

従来、桟橋の上部工は、鋼管杭の打設を行った後、足場・型枠支保・鉄筋組立・コンクリート打設といった一連の海上作業で構築されますが、潮位や波浪等の海象条件の影響を受けます。このため、桟橋上部工をプレキャスト化することで、海上作業の大幅な省力化が図れ、工期短縮のみならず、上部工の高品質化や安全性向上などの効果が期待できます。

桟橋上部工のプレキャスト化には、鋼管杭との杭頭接合が技術的な課題となります。そこで、当社は施工性を損なわず簡単に剛結接合できる方法として鞘管方式を開発しました。鞘管方式とは、プレキャスト化する上部工内に、あらかじめ鋼管杭よりも径の大きな鞘管を埋設して製作し、起重機船で上部工を鋼管杭に架設する際、鞘管内に鋼管杭を杭径程度挿入し、その間隙を無収縮モルタル等で充填して一体化するものです。

本方式は、国立大学法人 東京工業大学ならびに国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所との共同研究で、鞘管方式を採用した杭頭接合に関する構造実験を実施し、従来の現場打ち杭頭接合構造と比較して、高い杭頭結合性能※1)や優れたエネルギー吸収性能※2)を有することを確認しました(国土交通省東北地方整備局発注の桟橋工事にて提案し採用)。

 

特徴

現場打ち上部工と比べた本方式の特徴は、以下の通りです。

① 工期短縮効果⇒30%短縮

② 杭頭結合性能※1)⇒1.6 倍(レベル 2地震動※3)に対する設計の場合)

③ エネルギー吸収性能※2)⇒2 倍

 

本方式は、地震時の上部工に作用する慣性力が従来の施工方式によるものと変わらないため、下部工の再設計が不要で、施工時のプレキャスト化に最適な方式と言えます。

当工事では、プレキャスト受梁と鋼管杭を鞘管接合方式で施工したのち、予め工場製作された複数のプレキャスト桁を架設、PC鋼線で緊張することで一体化しました。

 

今後も建設現場での安全性向上、生産性向上に資する技術開発に取り組んでまいります。

 

※1) 杭頭結合性能:鋼管杭と上部工の相対回転角により評価した性能で,相対回転角が小さい程,結合性能が高いことを表す指標

※2) エネルギー吸収性能:杭頭接合部の応答変形により外力エネルギーを吸収する性能で,塑性域における粘り強さを示す指標

※3) レベル2地震動:対象施設において想定しうる最大規模の地震動

図

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